腰・骨盤・股関節の痛み・障害
(患者)
43歳の女性
(主訴)
2週間前より、右の腰部から臀部にかけての痛み
(既往歴)
20年前 右腓骨骨折
急性腰痛(ぎっくり腰)は2~3回経験あり
(現病歴)
子宮筋腫
過去にぎっくり腰の経験があり、痛みで動けなくなるのが怖いという事で来院されました。
2週間前に前かがみで荷物を持ち上げた所、腰部に痛みが走り、それ以来痛みが続いています。
(オステオパシー的評価)
左恥骨上方変位
恥骨結合部に圧痛
左寛骨後方回旋
仙骨機能障害
腰椎1番機能障害
(理学的徒手検査)
右腸腰筋の圧痛著明
腰筋 起立筋に筋過緊張
腰椎疼痛誘発テスト陽性
骨盤疼痛誘発テスト陽性
過去にぎっくり腰で強い痛みの経験をしている方は、その痛みを回避しようとして、
かえって悪化してしまう場合があります。
これを恐怖回避モデルと言います。
恐怖回避モデルとは、痛みの経験により精神的ストレスと疼痛回避のための
過少活動性により、さらに痛みが悪化し慢性化していく状態に陥る事を指します。
ストレスを受けると人間は、視床下部―下垂体―副腎系の作用により、
神経内分泌が活性化されコルチゾールの産生や交感神経を過剰に興奮させます。
この事は痛みを助長する1つの原因になります。
また、痛みを回避するため活動を制限していると筋力の低下が生じ、
この事が腰椎の不安定性を悪化させ痛みを慢性化させて行きます。
腰痛の施術においては、筋膜や関節の機能障害を是正すると共に、
骨盤・股関節・腰椎の不安定性に対する正しい運動、
及び精神的ストレス軽減が重要となります。
(施術 オステオパシーによる整体・矯正 鍼灸)
オステオパシーマニピュレーションによる整体・矯正に鍼灸を併用
上記検査結果の制限部位である、骨盤帯・腰椎・腸腰筋・起立筋に
オステオパシーマニピュレーションによる整体。
オステオパシーマニピュレーションには様々なテクニックがあり、
その人の身体の状態に合わせてテクニックが選択されます。
テクニックを大きく分けるとダイレクトとインダイレクトに分けられます。
ダイレクト、インダイレクト以外にもありますが、複雑になるため省略します。
簡単に説明するとダイレクトは制限のある方に操作し、
インダイレクトは制限から離れる方に操作します。
どちらの方法でも関節や筋膜を緩める(リリースさせる)事が可能です。
痛みが強い場合は、痛み刺激が起きにくいインダイレクトテクニックや
リラックスできるポジションに誘導しリリースさせる方法を用いる事が多いです。
この方の場合は、骨盤周囲はマッスルエナジーテクニック(MET)と
インダイレクト手技を組み合わせて施術し、腰椎はインダイレクトリリース、
腸腰筋はカウンターストレインというインダイレクト手技、
起立筋はポジショナルリリースを行いました。
因みに(MET)はダイレクトな方法ですが、
骨盤の機能障害は(MET)での反応が良いので痛みが出なければ、私は使用します。
腰筋・起立筋のトリガーポイントに対する鍼施術
トリガーポイントは筋膜上に存在する筋膜のよじれのようなものです。
オステオパシーマニュピレーションによる整体・矯正を行った後、
トリガーポイントの圧痛が残っている場合には鍼により筋膜のよじれを改善させます。
この方は、腸腰筋・起立筋部のトリガーポイントに圧痛が残ったため
鍼施術を併用しました。
機能障害を是正させた後は、
疼痛誘発テストで陽性となった腰椎、仙腸関節に対しての
運動療法を指導させて頂きました。
疼痛誘発テストは関節の不安定性を調べるテストです。
関節の可動制限や筋膜の制限は
オステオパシーマニュピレーションによる整体・矯正
によって是正可能ですが、不安定性に対しては是正できません。
不安定性には筋力強化が必要です。
整体及び矯正後、痛みのレベルは半分以下に減少しました。
後は、自宅での安定化運動で更に緩和されて行くでしょう。
関節・筋膜の制限を取り除き、不安定性に対して筋力強化を行い、
そして精神的なストレスのサポートを行う。
これが腰痛の根本施術につながります。
東京・中野の整体・整骨と鍼灸 ロアン鍼灸整骨院 院長