腰・骨盤・股関節の痛み・障害
ゴールデンウィーク前にひどい坐骨神経痛になり施術していた女性の方が、1ヶ月ぶりいらっしゃいました。
この方は、もともと腰部の脊柱管狭窄症があり、狭窄症の症状緩和で定期的にいらしています。
坐骨神経痛はなくなり、今回は狭窄症の定期的なケアと股関節痛のため来院されました。
狭窄症の症状(腰痛や歩行時の足の痛みなど)は緩和しており、普段の生活でも気にならないとの事。
ただ、時折その他の部位への症状が出現します。今回は股関節痛です。
これらの症状は、狭窄症に原因があると考えています。
脊柱管狭窄症自体は、脊柱(背骨)の脊髄が通る脊柱管と言われるトンネルが、トンネル内の靭帯の骨化や、椎体のすべり(すべり症)などで、狭くなっている事が原因です。
ただし、直接の神経圧迫ではなく、トンネルが狭くなった事により脊髄の静脈の還流が悪くなり、動脈の流入も減るため、神経が阻血をおこして症状を呈します。
神経の阻血は、背骨を伸ばしている姿勢で悪化しやすいため、歩行時など腰が伸びている状態では症状が出やすくなります。
その際、前かがみになって休むと脊柱管が構造的に広がり、神経の阻血が改善し症状が消失します。
これは間欠性跛行と言われる脊柱管狭窄症の特徴です。
この状態が長く続くと、神経自体が変性を起こし、常に痛みや痺れが出現するようになります。
常に痛みや痺れが続く状態や、直腸や膀胱の神経が障害を受けて、尿閉や失禁の症状(膀胱・直腸障害)が出現しているようであれば、医師は手術を勧めます。
なぜなら、神経の不可逆的な変性のため、歩行不可能となるからです。
背骨の中のトンネルが狭くなっている状態ですから、器質的に変形している物を元通りの状態に治す事は、すべての徒手療法やオステオパシーマニピュレーション、鍼灸では不可能です。
ただし、即手術適応の狭窄症を除き、症状を緩和させ、進行を遅らせる事は可能です。
この話はまたの機会に。
(主訴)
右股関節痛
歩行時や椅子からの立ち上がりで痛む
(既往)
腰部脊柱管狭窄症
20代の時に交通事故でむちうち
(理学的徒手検査 )
後屈動作で腰部に若干の痛みと右股関節の痛み
右片足立ちで右股関節の痛み
股関節の制限なし
その他、検査では特に異常なし
(オステオパシー的評価)
第3~5腰椎・腰仙関節に制限
LonL仙骨捻転(骨盤)
左腸骨前方回旋(骨盤)
横隔膜に制限
鎌状間膜に制限
盲腸に制限
施術(オステオパシーによる整体・矯正)
マッスルエナジーテクニック(MET)にて、骨盤矯正
インダイレクトテクニックにて腰椎にアプローチ
横隔膜リリース
肝鎌状間膜、盲腸にインダクションテクニック
腰部狭窄症による腰椎の動きの制限が、横隔膜の脚を緊張させ、横隔膜に接している肝臓の肝鎌状間膜の緊張につながり、鎌状間膜から臍、正中臍索経由で骨盤の制限を引き起こしたのかもしれません。
実はこの方、オステオパシーによる整体によって腰椎、骨盤、肝臓の肝鎌状間膜をリリースした後では、股関節の痛みは変わりませんでした。
盲腸のリリースを行った後に、動作時痛が消失しました。
ならば、盲腸だけやればいいじゃんという話ですが、おそらく骨盤経由で盲腸の制限が出ていたため、盲腸だけリリースをかけても改善しなかったように思います。
では、なぜ盲腸をリリースしたら股関節痛がなくなったのか。
大腿骨頭を栄養している内側・外側回旋動脈の影響?
骨盤の歪みで盲腸のすべりが低下して、股関節にいく栄養血管に悪影響?自律神経系の反射?
そこには、必ず解剖学と生理学の因果関係があるのですが、はっきり言って本当の事はわかりませんでした。
解剖学の理解を深め、自分なりに原因を理解する。
ただし、決して独りよがりではなく、学問として人の身体を理解する。
改めて大切な事だなと感じた一日でした。
東京・中野の整体・整骨と鍼灸 ロアン鍼灸整骨院 院長