坐骨神経痛・ヘルニア・狭窄症・胸郭出口症候群など
前回では腰部椎間板ヘルニアで来院された女性に対する、
一般的な徒手による理学検査を行いました。
その後に、オステオパシーによる全身の評価を行い、
腰部椎間板ヘルニアになってしまった原因を探していきました。
(オステオパシー的評価)
左寛骨上方剪断
S状結腸に制限
肝膜制限
横隔膜制限
心膜制限
心臓弁(大動脈弁及び肺動脈弁)に制限
右第1~9肋骨前方肋骨
頭蓋骨SBS(蝶形後頭底結合)圧縮および左側方ストレイン
左側頭骨制限
寛骨は骨盤を構成する骨で、左右にあります。
この方の左の寛骨は仙骨という骨盤の中央にある骨に対し、
上方に滑り上がっていました。これを上方剪断と言います。
この上方剪断があると、体の半分が上方に滑り上がる事になります。
簡単に言うと、
活断層がずれるかの如く体の半分が上方に突き上がってしまうのです。
酷い人だと目の位置なども明らかに変化している人もいます。
この剪断がある場合、
まずは剪断をもとに戻さなくてはなりません。
突き上げる力が強いので、
他の部分を矯正しようとしても上手くいかないのです。
この方の身体の制限を考えると、
なぜ腰部に椎間板ヘルニアが生じたのかが解ってきます。
答えは横隔膜にあります。
横隔膜には右脚と左脚という2本の足が腰椎に付着しています。
付着部分が制限を起こすことにより、
付着部より下の腰椎は過剰に動かなくてはならなくなります。
例えば腰を曲げたり反らしたりした時、
横隔膜が硬く横隔膜の脚に制限があれば、
脚が付着している腰椎の動きが少なくなり、
その代わりにその下の腰椎が過剰に動くことによって、
その運動を遂行しようとします。
過剰に動き続けた結果、
ついに椎間板は損傷し、
髄核が飛び出てヘルニアとなったのでしょう。
では何故横隔膜が硬くなったのでしょうか?
それは、肝臓と心臓が関係しています。
肝臓は肝冠状間膜、左右三角間膜により横隔膜に付着しており、
心臓もまた心横隔膜靭帯により直接横隔膜に付着しています。
このどちらかの臓器または両方の膜の制限が横隔膜の緊張につながるのです。
肝臓の膜が硬くなる理由としては、薬や酒類がありますが、
食品に含まれている多量の添加物が
かなりの割合で原因となっていると私は考えています。
心臓の膜や心臓弁も同様の理由で硬くなる可能性があり、
また空気中の化学物質もその原因となるでしょう。
その他、非常に深刻な環境の問題があるのですが、
とある事情で書くことはできません。
また肝臓の膜が制限を受ければ、
他の臓器が多かれ少なかれうっ血する可能性が生じます。
肝臓にはすべての血液を解毒する作用があり、
その際、各臓器からの血液は門脈を経て肝臓に流れます。
肝臓の膜が硬くなり門脈が締まれば、
当然臓器からの静脈血は肝臓へ流れ込みにくくなり、
結果臓器のうっ滞を生じます。
この女性のようにS状結腸にうっ滞が起きれば、
S状結腸間膜が制限を受け、
坐骨神経に関係する動静脈を圧迫することになり、
腰部椎間板ヘルニアによる痛みや痺れを、更に増悪させてしまいます。
このようにオステオパシーでは、
腰部椎間板ヘルニアに至った原因を、
触診と解剖学の知識から導き出し、
腰に対するアプローチだけではなく、
ヘルニアを引き起こした本当の原因に対するアプローチも行うのです。
そしてこの本当の原因に対するアプローチが症状の緩和に繋がるのです。
(施術 オステオパシーによる整体・矯正)
オステオパシーによる全身評価で見つかった部位に対し、
矯正・整体を行いました。
矯正も筋膜の連鎖や骨格と内臓の関係などを考えながら行います。
この方の場合は、まず寛骨上方剪断、
次に前方肋骨を矯正し、心臓へと移りました。
最後に、ヘルニア部分の静脈還流を促す目的で、
腰からの静脈血を心臓に戻すルートである
腰静脈から奇静脈と腰椎を優しくリリースして終了しました。
施術後、腰部痛および足の痺れは緩和しているとの事。
いきなり初回で全ての症状がなくなる訳ではありませんが、
この様子だと手術を回避できるかも知れません。
施術は症状にいかにアプローチを行うかではなく、
その人自身が持ち合わせている(健康になるための力)にアクセスし、
引き出す事が大切なのです。
東京・中野の整体・整骨と鍼灸 ロアン鍼灸整骨院 院長