自律神経系・不定愁訴
前回の続き。
内臓マニュピレーションは皮膚から直接触れない臓器に対するアプローチの方法です。
内臓は身体の深部にあり、深部の膜の制限は身体に大きな影響を与えますので、
内臓に対する整体術である(内臓マニュピレーション)は非常に重要です。
内蔵マニュピレーションの基本はフランスのジャン・ピエール・バラル
という先生が開発されました。
最近、内臓へのアプローチとして(腸もみ)を謳っている整体院や接骨院等がありますが、あれはただのマッサージです。
単なる便秘程度なら良くなるかもしれませんが、
内臓マニュピレーションとは、全く異なるものです。
では、行きます。
一つは体の中にある構造物(内臓や大きな血管など)に直接圧をかける方法。
目的の組織の固有の動きや硬さを感じ、
そこにぴったりと圧を合わせる事でその部分に侵入できます。
胸部であれば、肋骨から最内肋間筋―胸内筋膜―壁側筋膜―臓側筋膜―内臓実質と
層になっており、それぞれを感じ分けて侵入する訳です。
心臓の筋膜は壁側の筋膜が線維性心膜であり、臓側の筋膜が漿膜性心膜です。
その膜の下に心臓の実質が存在します。
心膜をリリースさせるには、心臓の実質に圧を掛けずに、
心膜の部分に圧を掛けて操作しなければならないという事です。
もう一つの方法は、筋膜が連続している特性を利用して、
まったく別の場所から解剖学的な筋膜の繋がり考え、目的の場所を操作する方法です。
例えば左の手の指の膜を利用して、
筋膜を操作し心臓の弁(肺動脈弁)まで繋げて施術を行ったりします。
体の内部にある内臓へのアプローチや神経・血管へのアプローチは、
多くの日本の施術者が思っているように、
私もオステパシーを知る前までは不可能と思っていました。
思う以前にそのような構造物にアプローチする事など、
頭の中にありませんでした。
ただ、オステオパシーを学んでいくとそれが不可能な事ではなく、
当たり前の事だと気づかされました。
不可能に感じたのは自分の解剖学の知識と触診レベルが乏しいためでした。
日本の学校教育における解剖学も基礎という点では大切ですが、
アメリカ・ヨーロッパにおける、より深い観点での解剖学の知識が必要であり、
組織の質感や固有の動きを感じ取る触診訓練が重要なのです。
心膜や心臓支持靭帯をリリースすると頚椎の制限が解放される場合があります。
頚椎と心臓は心椎骨靭帯で繋がっているからです。
この方は施術終了後、肩こりが解消され、物がはっきり見えるとおっしゃっていました。
これはオステオパシーによる整体及び矯正により関節の制限が解放され、
さらに過度な交感神経の反応が軽減した結果です。
これにより筋肉の過緊張は軽減し、血流の増加がみられたのでしょう。
自律神経系の乱れの原因となる精神的ストレスは、
肉体的ストレスを(痛みや関節の制限等)を解放する事でも軽減しますが、
仕事上でのストレスは実は結構やっかいです。
過度なストレスはご存知の通り、体に非常に多くの悪影響を与えます。
これは、神経内分泌系の働きによるものです。
ストレスにより視床下部―下垂体―副腎系の活性が生じると、
コルチゾールというホルモンが過剰分泌され交感神経が亢進して、
体を緊張させるからです。
このストレスによる生理学的損失をアロスタティック負荷といいます。
この方の場合、アロスタティック負荷を軽減させるために、
仕事量の調節や、気分転換できる事を見つける、
そして定期的なオステオパシーによる整体及び矯正にて、
肉体的なストレスを解消させる事が必要です。
東京・中野の整体・整骨と鍼灸 ロアン鍼灸整骨院 院長