自律神経系・不定愁訴
自律神経症状に悩む30代女性の方の続きです。
前回は何故自律神経が失調するのかをホメオスタシスとアロスタシス、生理学の観点から説明しました。
今回は、オステオパシーにより、どのように身体の生理学の範囲を広げ、ストレスに対する受け皿を大きくするかを書いて行きます。
(オステオパシー的評価)
心膜及び心臓弁の制限
蝶形後頭底結合(SBS)圧縮
右側頭骨制限
右口蓋骨制限
傾聴という身体を調べるテクニックを用いると、上記に強い制限を感じます。
オステオパシーでは、身体の左右の高さの違いを目線で確認したり、関節を動かす検査、そして傾聴という身体をつなぐ膜・液体・エネルギーにアクセスして検査する方法などがあります。
これらを統合して、何が原因で、生理学の範囲を狭めているのかを考えると同時に、症状に対する真の原因を見つけて行くのです。
全身を評価すると、骨盤の問題など様々な制限が出てきます。
実際この方も、もっと沢山の制限がありました。
ただ、施術に関しては、最初の選択として上記の制限に対し行いました。
数多くの制限から何故それを選択したのか?
症状に対する優先順位も考慮しますが、本当に優先されるべきは身体の内なる声です。
なんだか怪しく、そしてあやふやに聞こえますけどね。
(施術 オステオパシーによる整体・矯正及び鍼灸)
鍼により身体を活性化した上で、上記制限に対しリリースを行いました。
最初に鍼を併用したのは、身体を治すためのエネルギーを向上させるためです。
直そうとする力が強くなるので、リリースが早く生じます。
因みにこの方には、脈やお腹の状態から脾虚肝虚の相克調整を行いました。
これは経絡治療と言われる鍼灸の方法で、陰(肝・心・脾・肺・腎・心包の臓器)のエネルギーを補い、陽(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の臓器)の余分なエネルギーを抜くのが基本です。
ただし私は陰経の処置が終わった後、陽経の処置はあまりしません。
オステオパシーマニピュレーションにより、リリースを行うと最終的に陽経も整う事が多いからです。
最後に検脈して、陽のエネルギーは抜いたほうがいいなと思った時は陽経も用います。
昔は純然たる経絡治療を行っていましたが、オステオパシーを知ってからは、鍼に対する考え方も変化しました。
右側頭骨と右口蓋骨の制限は、恐らく過去の歯列矯正の影響でしょう。
側頭骨と口蓋骨は強い圧縮を受け、ほぼ動きがありませんでした。
そして心膜の影響によりSBSの運動制限が生じています。
これらを、解放し脳の動きを傾聴してみると、大脳辺縁系の動きがまだ少し良くありません。
この動きを回復できれば、視床下部―下垂体―副腎系によるストレス反射も正常に近づくでしょう。
解剖学の異常と生理学の異常を同時に対処することにより、身体の受け皿に余裕を持たせる。
そうすると、アロスタティック負荷は生理学の範囲を超えることなく、生理学の範囲に落ち着きます。
その上で、外部環境からのストレスを考慮する事が大切です。
残念ながら薬で症状を押さえつけるのは、何の解決にもなりません。
この先、症状が悪化していっても、一時的に症状が安らげばいいという人は別ですが・・・。
自律神経症状があり、安定剤などを服用している方は最初は服用しながらの施術でも構いません。身体の生理学が正常になれば、薬は自然と必要なくなります。。
この方の場合、多少時間は掛かるでしょうが、身体の反応を診ると施術を重ねれば生理学の範囲に戻れそうです。
1週間後に予約を入れてもらい、本日は終了です。
東京・中野の整体・整骨と鍼灸 ロアン鍼灸整骨院 院長