坐骨神経痛・ヘルニア・狭窄症・胸郭出口症候群など
足の痺れと痛みを伴う腰痛の患者さんの続きです。
この方は、腰痛と左下肢特に後面部の痛みと痺れがあり、坐骨神経痛様の症状を訴えていました。
前回のブログでは、理学的な徒手検査を行い、痛み痺れの大まかな場所を調べ、純粋な神経症状ではない事が分りました。
今回は、オステオパシーによる全身評価で判明した本当の原因と、施術の内容などを書いて行こうと思います。
では、全身評価から診ていきましょう。
(オステオパシー的評価)
下肢筋膜伸長テスト 左陽性
傾聴にてS状結腸から左結腸曲に制限
左仙腸関節制限
左横隔膜脚制限
左側頭骨制限
蝶形後頭底結合(SBS)制限
下肢筋膜伸長テストとは、足の筋膜を利用した体の評価方法です。
足を底屈させ、元の位置に戻した際に、左右どちらの筋膜の戻りが早いかを感じるテストです。
このテストで、ざっくりと体の左右どちらに問題があるか分かります。
身体の膜は全身繋がっている事を利用したテストです。
この方の場合は左に問題がある事が分りました。
傾聴とは、身体に手を当てて、どこに引かれるかを調べるテストです。
これも体の膜を利用した評価方法です。
腹部、胸部、頭蓋からの傾聴でS状結腸から左の結腸曲にテンションを感じました。
左の結腸曲は大腸である横行結腸と下行結腸の角の部分です。
ここは横隔結腸間膜により横隔膜と密接に関係しています。
呼吸を調べると左の胸郭の動きが悪く、再度頭蓋からの傾聴にて、横隔膜の付着部である脚部にもテンションを感じました。
因みに左脚は腰椎の2番に付着します。
左脚は仙骨まで繊維を伸ばします。
またS状結腸は間膜によりお腹の背側の膜である後腹膜に付着します。
左仙腸関節のロックはこれらを介して生じたものでしょう。
左側頭骨は左蝶形骨と関係があり、この部分も動きの制限がみられました。
蝶形後頭底結合(SBS)は頭蓋骨の蝶形骨と後頭骨の軟骨性の結合部分です。
実は頭蓋骨はここを中心に屈曲・伸展(外旋・内旋)の動きを生じます。
そして、その動きは全身に波及します。
これを一次呼吸といいますが、一次呼吸は生命力そのものと言っても過言ではないくらい重要なものです。
脳脊髄液や体の微妙な体液循環(細胞間同士の循環)に影響を与えています。
SBSの動きの悪さは、全身状態に悪影響を及ぼす可能性があるということです。
検査結果から、左結腸曲からS状結腸を中心にした制限により、腰椎、仙腸関節のロックが生じ腰痛を引き起こしているのと、また後腹膜に掛かった過剰なテンションにより、下肢から心臓へ戻る静脈を圧迫している事が足の痺れに繋がっていると考えました。(奇静脈を介した硬膜外静脈叢によるものか、坐骨神経の静脈還流に関する腸骨静脈の枝かは不明)
そこで、再度、最初に行った理学的徒手検査のSLRをS状結腸に抑制をかけて行ったところ、足の角度が45度程で下肢に痛みと痺れを生じていたものが、症状再現する事なく90度近くまで挙上できました。
これはまさしくS状結腸を中心にした制限により坐骨神経痛様の症状が出現していることを物語っています。
このように理学的な徒手検査のみでは理解できない症状も、オステオパシーによる全身評価を行うことにより原因が解ります。
そこがオステオパシーの素晴らしさの一つです。
ただ、解剖学や生理学の知識と、技術の訓練は欠かせません。
因みに私、休日でも知識と技術の訓練をしています。
もう完全に癖です。
生活の中の充実感の一つになっています。
休日のその時間、うちの奥さんはつまらなそうにしていますが・・・
さて原因が解れば、施術です。
続きは次回。
東京・中野の整体・整骨と鍼灸 ロアン鍼灸整骨院 院長