坐骨神経痛・ヘルニア・狭窄症・胸郭出口症候群など
1の続きです。
では、さっそくこの方の症状(首・肩・背中の痛み、右腕の痛み・痺れ)
を起こしている 本当の原因を見つけていきましょう。
(オステオパシー的評価)
腹部・胸部傾聴により右肺領域の制限
頭部傾聴により心臓(心膜)の制限
オステオパシーによる全身評価では、
骨格のゆがみはもちろんの事、
様々な関節の制限や内臓の膜の制限、
頭蓋の縫合の可動性の制限、
血管や神経のテンション異常など、様々な事がわかります。
全身評価して見つけ出した様々な制限の中から、
この方の現在出ている症状で、直接の原因となり得るのが上記の2つでした。
特に肺の領域と頚椎の関係には非常に深いものがあります。
肺は壁側と臓側の2重の膜である肺胸膜で覆われています。
そして呼吸の際、この2重の膜が滑ることによって肺は十分に膨らめるのです。
その壁側の胸膜は胸膜の一番上(胸膜頂)で
堤靭帯(肋骨胸膜靭帯 ・椎骨胸膜靭帯 ・横突胸膜靭帯)
という組織で頚椎と肋骨に付着し、肺全体を吊っています。
呼吸をしたときに、横隔膜が下がり、
肺が下方に膨らんだ時に肺が下に落ちないのは、
堤靭帯で頚椎や肋骨から吊るされているからです。
もし、肺自体の問題や肋骨の問題などで2重の膜である胸膜が固着していると、
臓側胸膜は呼吸の度に足方に引かれることになります。
そして、先ほどお伝えした胸膜の付着である頚椎も
常に足方に引かれ続け、結果的に頚椎の可動制限が生じます。
頚椎の可動が制限されたらどうなるでしょうか?
当然その部分は動きが悪くなりますね。
でも、日常生活では首を動かさなくてはなりません。
動けない関節があると、その上下の関節は動けない関節をカバーするため
過剰に動かなくてはいけなくなります。
動き過ぎた結果、痛みを出したり、変形を引き起こしたりするのです。
この方の場合、肺胸膜のテンションが付着部を引っ張り、
その関節をロックしたことにより その上部の関節が過剰に働いた結果、
炎症を引き起こし、神経にも影響を及ぼしていると考えられます。
このような肺胸膜の付着部由来の頚椎症や
首の痛み背中の痛み、腕の痺れは非常に多いです。
ただし、肺胸膜のテンションを正常化しただけでは
症状は変化しにくいものです。
頚椎症などで肺領域のテンション異常がみつかれば、
肋骨、胸椎、鎖骨下筋、小胸筋、烏口鎖骨靭帯、肩鎖関節、斜角筋、胸膜頂、鎖骨下動脈、腕神経叢、肋間上腕神経、長胸神経などを詳細にみていかなくてはなりません。
これらの部位での異常も胸膜に関係し、腕の痺れの大きな原因になるからです。
やらなければならない事がたくさんありますね。
また、心膜の支持靭帯も頚椎に付着しますので頚椎症や首の痛み、
腕の痺れに関係することがあります。
ただし、この方の場合は胸膜の影響のほうが強そうでした。
(施術 オステオパシーによる整体・矯正)
今回は肋骨・胸椎・胸膜をリリースした後、
腕神経叢をリリースして終了にしました。
あまりにもたくさんの箇所を施術すると、
脳の視床という部分で刺激の情報をカットしはじめ、
脳からの身体を治すためのフィードバックが受けれなくなる為です。
腕神経叢に対し軽くストレッチをかけるようにリリースを行うと、
首の神経の出口である椎間孔の周囲に張っている
フォレスチエ靭帯と神経を取り囲む静脈にも影響を与え、
神経の滑りが良くなります。
実際に腕神経叢は、腕を動かした際3~4センチ滑らなくてはなりません。
今回の施術により、胸膜のテンションを抑え、頚椎の可動を正常化させ、神経の滑りをよくさせたということです。
結果は、後屈時の首、肩、腕の痛みや痺れはあるものの、
常時痛から解放されました。
翌日、夜間痛がなくなり、久しぶりに寝れたとの電話があり、私も一安心しました。
次回来院時は、まだ残っている部位を根気よくリリースさせていきます。
結構大変です。
東京・中野の整体・整骨と鍼灸 ロアン鍼灸整骨院 院長